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この記事では、英国と日本の両大学院での修士号取得を目指されている森江建斗さんの「ダブル・マスター」についての情報をお届けしています。前号「出願までの意思決定」に続き、今回は出願プロセスについて紹介します。

出願プロセスとタイムライン

 出願の過程については、述べたとおりLSEしか出願をしていないので、LSEの場合(しかもDepartment of International Relations)しか記すことができないので大変恐縮だが、あくまで一人の体験として出願のタイムラインの概要を記述しておく。

1)出願時期

 英国の出願は、一般的には、rolling application systemといって、アプリケーション・フォームが開設され次第、アプリケーションが可能で、出願が提出された順番に審査にかけられる。1月の中旬から下旬に第一回の結果発表があり、それより前に(実際には審査される時間を含めて十分前に)提出された出願の中から合格/保留/不合格が発表され、その後随時コースの定員が埋められていく(詳しい出願の情報は、各大学やコースのHPや該当する先輩方のブログ記事などを確認していただきたい)。英国ではオックスブリッジやロンドン大学のような人気の大学では、学部にもよるが、4月には多くのコースの定員が埋まり切るらしい。私の学部では、12月上旬にはそのアプリケーション・フォームが開設されるため、12月中旬(10~15日あたり)を目処に準備を進めた。12月15日までとしているのはあくまでも目安だが、英国の大学の試験官がクリスマス休暇を取る前に出願を大学に送り込むというイメージだ。

2) 出願書類と各スケジュール

 まず簡単に必要な出願書類について、言及し、それぞれの特性と準備のための各スケジュールを論じる。英国の修士課程への出願に必要な書類は一般的に、大学の成績、TOEFLやIELTSの英語スコア、推薦状、志望動機書(Statement of Purpose: 以下SoP)、CV(履歴書)である。多くの先輩方が指摘するようにSoPが最も重要で、次に推薦状、そしてその他の書類となる。従って、重要度の高いものから順番に論じていく。

i. 志望動機書(SoP)

 LSEの私が出願した学部では、1,500 WordかつA4で2ページ以内という制限があった。この字数制限で1,400 word以上書き、フォント12で通常の余白の設定の場合、上手くA42ページで収まらないことも多いので、フォントや余白の調整といったアウトラインから工夫を行った(フォントは10.5以上が目安だろう)。こうした工夫は、LSEを含め英国の大学院へと進学をされた先輩方のSoPを見せてもらいながら学んだ。次に内容についてだが、具体的かつ個別的であることが求められる。具体的な書き方について細かく書くことは紙面の都合で難しいが、「なぜあなたがその大学のコースで学びたいのか」、「なぜコースのトピックに関心があるのか」、そして「仮に希望のコースで学ぶことになったとして、どのように修士課程の間過ごすのか」という問いを終始意識しながら、試験官に試験管に出願者が有意義に修士課程を過ごせそうだと具体的に想像させることができれば、良いSoPということになる。

 私のスケジュール感について言えば、下書きとなるような文章は箇条書き程度にまとめて9月下旬頃にはつくり、推薦状を書いてくださる先生にも送っておいた。それは、推薦状を書いてもらう際に、参考になると考えたためで、またそれがSoPを書く上で適度なペースメーカーとなった。10月下旬までにはLSEのための自己ストーリを用意し、専門的な研究内容や大学院で問いたい問いや手法については、卒業論文の研究を進めながら深化させた。こうした背景には、2年間の米国の修士課程とは異なり、英国の1年の修士課程は、より具体的な研究テーマや処理可能な問いの大きさが求められるというアドバイスを受けたものだ。

 そして11月1ヶ月を使って、1,500 wordsのSoPを推敲に推敲を重ねた。細かな変更を含めておそらく50回ほど推敲を行ったが、大まかに4つのプロセスを経て、SoPに磨きをかけた。①英会話レッスンを利用した添削(少し禁じ手かもしれないが、IELTSのスピーキングで仲良くなった講師の先生に簡単な文法や語法のミスを確認してもらった)、②英国の大学院に進学した先輩方からの大まかな全体構想や論理構造についてのアドバイス、③ネイティブの友人によるより細かな文法ミスや単語/表現のニュアンスのチェック、④大学の教授や推薦状を書いて頂く先生によるアカデミアの人間からの客観的な最終のフィードバックという順番で、お世話になった。私の場合は、本当に恵まれすぎていたと振り返り感じる。添削サービスなどもあるので、もし金銭的に余裕があれば、利用してもいいだろう。

ii. 推薦状

 一般的には2通、多いところ(例えばオックスブリッジ)で3通まで提出が可能である。よく言われるように、推薦を頂く先生が希望する大学のOBOGや教授職、もしくは有名大学の教授だといいとされるが、実際にはそうした「知名度」や「地位」にも増して、出願者のことを知っているかがより重要とされる(もちろん前者の性質が後者の前提に加えて伴うと「強い」推薦状となるのは間違いないが)。「出願者を知っている」の定義としては、一学期以上のセミナーなどの少人数ゼミの受講や指導教員という立場が、最も説得性が高いと考えられ、従って、少なくとも1通はそうした先生から推薦をもらえるようにするといいだろう(実務よりの修士課程、たとえばMBAなどであれば、指導教官よりも職場の上司の方がいいなどの例外はもちろんあるが)。

 推薦状を書いて頂くにあたって、私が重要だと考えたことは、①自身の専門性の有無や程度を評価してもらうこと、②英語の運用力を評価してもらうこと、③人柄を評価してもらうこと、であり、①と③は多くの場合指導教員やゼミの先生が評価をする立場にあるだろう。一方で、②の評価を公平に下してもらうためにはどうすればよいかと考え、2人目の推薦状執筆者を探した。候補としては、(a)オックスフォード大学のサマースクールの先生、(b)オランダの留学先の先生、(c)4年生後期に受講していた英語授業の先生(京都にあるスタンフォード・センターというスタンフォード大学の海外機関)の3名で、そのなかで直近の自分を最も知り、また直接お願いしやすい状況にあるとし(c)の先生にお願いした。

 推薦状をお願いするタイミングとしては、余裕をもって出願から1ヶ月から1ヶ月半以上前にお願いすることが重要だ。またその際にはSoPの下書きやCVなど同封することで、出願者の進学の意志やモチベーション、能力などについて、アピールすることも重要だろう(もちろん、それが推薦状に盛り込まれるかは定かではないが)。

iii. 大学の成績、TOEFLやIELTSの英語スコア

 これらの書類で規定のスコアや成績を満たすことは、英国の受験において最低限必要なことではあるが、合格のための重要条件ではない(例えば英語力については、Conditional Offerという形で留学開始までに必要な英語スコアを取り直すかプレ・マスターコースというアカデミック・イングリッシュ用のコースを留学前の夏休みの約1ヶ月履修することなどを合格条件とする場合もある)。大学の成績については、ロンドン大学系列では一般的にはGPA3.6/4.0が基準として求められ、オックスフォードではGPA3.6以上が応募者の多数派になるという(ただし例外もしばしば聞くのであくまで目安であろう)。海外大学院への進学に関心のある読者の方は、学部時代からの成績に気をつけておくべきだろう(また社会人で海外修士に挑戦される方が学部時代のGPAでトップ校への出願を躊躇されるという話をしばしば聞くが、そうしたことも踏まえて、学部時代からの準備が大切かもしれない)。私がGPAや成績について悩んだことは、オランダ留学時代に異なる専門分野の授業を履修し、挑戦心から敢えて最終学年のゼミを受けた結果、留学時代の成績が芳しくなかったことだ。これについては、京都大学への単位変換を敢えて行わずに、京都大学での成績だけの提出を試みたが、SoPやCVに留学先を記述するとやはりそうした留学先の成績表の提出も求められたので、追加で提出した。この成績が、プラスとなったのか、マイナスとなったのかはわからないが、少なくとも交換留学に挑戦し、英語の環境でも約一年間生き残れたという証明にはなったのではないかと思う。

 英語のスコアについては、各大学のコースのアプリケーションの欄に必要スコアが記載されている。勉強法などについては、多くのブログなどの記事があるので、そちらに譲る。ただし、IELTSなどの教材は高いため、大学の図書館の利用(過去問集など)や、リスニングはYoutubeを利用、スピーキングはDMMなどのオンライン英会話を利用したとだけ、簡単に述べておく。

Fig1. LSEのOld Buildingの入り口にて

奨学金と京都大学大学院への進学の決意

 実用的な知識よりも、より根本的に社会のあり方を問えるような研究を行いたいという思いもあり、4年生の秋の時期には変な意地があったのであろうか、自分の研究を非常に「わかりにくく」説明して、奨学金へ応募したことで、多くの奨学金の獲得を逃した。LSEの合格を受け取った4年生の1月中旬(学部卒業まであと2ヶ月)でも奨学金は獲得できておらず、少し気がかりだった。その頃には、卒業論文を書き終え、研究のリテラシーが向上したのだろうか、その頃から、京都大学を含めた日本の大学で行われている研究が、面白いと再度認識できるようになった(それまではなぜ面白いのか、アカデミックな意味で理解できていなかったのだ)。そこで、京大の大学院にまずは進学して、LSEの留学までの期間を過ごそうと決意し、2月に無事大学院合格を果たした。

 そして、ちょうどその頃に、「トビタテ留学JAPAN」の応募があり、自分がその出願の資格があることを知る。条件として、日本の大学に所属し、帰国後にその大学を卒業することが条件だが、奨学金がなかったこともあり、なんとか出願してみようと考えた。

「トビタテ留学JAPAN」の応募で一番ネックになったのは、どのように自分の研究と実践活動(と呼ばれる実務的な課外活動)を関連付けるのか、そしてただでさえ忙しいと噂のLSEでの修士課程でどのようにして実践活動のための時間を捻出できるのかという問題だった(実際正規修士課程で同奨学金を利用されている方の多くは「理系」の方で、ラボでのインターンを実務活動に当てている印象があった)。たとえ計画書の上では上手くいきそうでも、現実としてどの程度ロンドンで実行できるかは不安だったからだ。しかしそれでもなんとか同奨学金に採用され、LSE留学の一部の資金を賄うことができた(残りは、家族からの支援)。そして英国留学では、研究+アルファを達成するための準備がはじまった。次回は、LSE留学時代とその後について書く。

Fig2. フロイト博物館前にて

次号へつづく。。。

森江建斗 (モリエ ケント)
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE)
MSc International Relations Theory
京都大学 人間環境学研究科修士課程

はじめに

 ニュースレターの読者の皆様、はじめまして。2018年9月から2019年9月までの約1年間、英国のLondon School of Economics and Political Science (以下LSE)にて、MSc International Relations Theoryという修士課程に在籍していました。そして、現在は京都大学人間環境学研究科修士課程にて2つ目の修士号の獲得を目指しています。このニュースレターでは、米国への大学院(修士・博士課程)進学をされた方の経験談が多いとは思いますが、いわゆる「文系」とされる分野でも、英国や日本での修士号を組み合わせて、研究の計画を立ててみることも可能なのだという参考になれば幸いです。また、こうした少し変わった経歴を踏むことになった経緯や意思決定の背景についても、簡単に述べられればと思います。

 本記事は、あくまで個人的な価値観・考え方を反映した記事です。また後から振り返り論理性や一貫性を「作り」きれいに見せるよりも、各時期に何を感じながら(多くは悩みながら)どのように意思決定を下していったのかが伝わるように少し叙述的に書きました。その点を踏まえて出願準備や海外留学中の合間にご笑覧頂ければ幸いです。

海外修士課程への挑戦を決まるまで

 英国の大学院進学に関心を抱いたのは、早く見積もれば大学2年生のオックスフォード大学でのサマースクールへの参加し、はじめて海外の教授から自らの専門分野を学んだことがきっかけであった。最終的に出願を決意したのは、4年生の春(4~5月)である。その頃私は就職するのか、それとも内定を断るのかという岐路に立たされていた。当時、オランダのユトレヒト大学に交換留学していたが、4月のロンドンキャリアフォーラムで運良く内定を頂き、就職か進学かという選択の淵に立つことになった。多方面で先輩・先生方に相談しながら、自分の進路について、1ヶ月(内定受諾か否かの返事の期限)悩んだ末に、大学院の進学を決め、今回の内定は断ることにした。

就職か海外大学院進学か

 就職か海外大学進学かを選ぶ際、決め手になった観点について、簡単に記しておきたい。最も大きかったのは、いま関心のあるテーマを深めたいという欲求であった。そしてせっかく修士課程に進むのなら、その分野で最先端の国で学んでみたいと、オックスフォード時代やユトレヒト留学を思い返しながら考えた(この時点では国内大学院への進学はあまり考えていなかったが、それは前述した海外での経験から、専門分野を海外で学んでみたいという気持ちが強かったためである)。多くの人が悩むであろう点は、一旦社会人になってから(海外)大学院に進学するか、そのまま学部卒業の後に(海外)大学院に進学するかであろう。この問いに対して、私は、前者のキャリアは可能なものの、それは実務的なキャリア(例えばビジネスにおけるキャリアアップや国際機関での勤務)を踏まえた内容の海外修士号の取得に限られがちではないかという考えを持つに至った。今現状で有している学術的な問いや視点を大切にしつつそれをそのまま深めていきたい場合、実際に社会経験を積み実務的な専門性を身に着けた上で学び直すという選択肢よりも、学部卒業後に直接大学院進学するほうが、当時の自分には魅力的に映ったのだ。

留学先の国選び

 次に、どこの国のどの大学に出願するかの判断軸について書きたい。まず、修士課程の制度は国によって大きく異なる。例えば、私の分野である国際関係学では、米国や大陸ヨーロッパ、アジアの大学の多くは2年間の修士課程となる一方、英国やオランダは1年の修士課程が主流で2年の修士課程は少数である。(2年のものの多くはResearch Masterで、1年制のコースワークに加え、米国で受けるとされるメソドロジー(量的分析と質的分析など)を受講する他、2年でゆっくりと修士論文を計画するもので、多くの場合はPhDへ進むための予備期間と見なされる)。その他にも、2大学での修士課程を2年(各大学1年)で完了させるDouble Degree Programも存在する。Double Degree Programは私が進学したLSEにも用意されていたためそちらにも大変関心があった。

 どの程度の海外大学院進学者の方々がどれほど広範な視野を以て論理的に意思決定を下すのかわからないが、私の場合は、それほど包括的にあらゆる選択肢を検討したわけではなかった。例えば、米国に関しては、出願のための準備(試験なども含む)が多く、卒業論文にも注力したかった自分にとって魅力的に映らなかった。 

 そうした消極的な背景に加えて、同じゼミの先輩が2年連続でLSEへ進学していたこと、また夏から本格的にはじめた卒業論文の研究が英国で盛んであることに気付いたことで、私の留学候補先は次第に英国に決まっていった。また、英国は米国と比べて必要な出願資料・要件が少なく、比較的出願に労力を割かれずに済むということも、その決断の後押しをした。

Fig1. バスの2階席より、通学風景

大学選びとコース選び

 そうして夏頃には出願を英国に絞り、オランダ留学より帰国した。次にどの大学へ出願するのかという問題に直面したが、ここは比較的スムーズに決定した。結論から言えば実際に出願したのはLSEのみで、他に「滑り止め」は何も受けなかった。それは、おそらく前述のオックスフォード大学のサマースクールの教授が修士課程でLSEを出ていたこと、身近な先輩・先生方からの影響、そして卒業論文で頻繁に引用していたGeorge Lawson先生やBarry Buzan先生(現在は名誉教授で教鞭は取っていない)がLSEで教鞭を取っていたことなどが、絡み合って、LSEしかないと思っていたのだ。LSEには、私の求めている知的土壌が存在したのだ。LSEに行けなければ英国留学しないと、半ば頑固に決めつけていた節があった。

 大学選びがスムーズに進んだ一方で、どのコースに出願するのかということに関しては大変悩んだ。悩み方としては、①やはり1年は修士課程として短いのではないか、(そこから派生して)②2年間のReserach MasterやDouble Degree Programに応募するのか、それとも③様子を見る形で一旦1年間のTaught Master(1年間でコースワークが中心となるがコース終了後には修論執筆もする「盛り沢山な」コース。英国では一般的)に出願するべきか、という悩みであった。一般に英国の1年間のTaught Masterに出願する場合、修士課程終了後にすぐに就職を目指すのであれば早い人であれば修士課程に入ったばかりの11月のボストンキャリアフォーラムを、遅い人でも3月のロンドンキャリアフォーラムを目指すと聞いていた。そもそも卒業後にすぐ就職するのかも当時決めておらず、自分の研究を深めたいのに就職活動に時間取られては意味がないだろうという贅沢な意地によって、英国の修士課程1年、単位取得によるTaught Masterの選択肢は4年生の秋頃には魅力的には映っていなかった。一方で、学びたいものがLSEにあることは明確であったものの、2年間海外で大学院生活を続けることの資金的な負担に関する不安もあった。

 結局、4年生の秋の段階では、LSEの1年コースとLSEが関係するDouble Degreeを比較検討し、もっとも求めている時間とはLSEでの学びであり、それを最も直接的に得られるのは「LSEでの1年ではないか」という結論に至り、シンプルにLSEの1年間のTaught Masterを選択し、その後の計画はまったく考えずにInternational RelationsとInternational Relations Theoryという2つのコースに出願した。2年間のResearch Masterの選択肢は、1年の間にシラバスや教授との繋がりを作れれば、満足するのではないかという考えに帰着した。その結論を導くに当たり、実際に6つほどの悩んでいた候補のコースを書き出し、卒業までの時間割を組み、可能であればシラバスを入手し、徹底的に具体性を引き出した上で結論をくだした。こうして行き当たりばったりな出願先の選定は4年生の10月下旬には決定し、あえて言うなら選択肢③へと落ち着いたのだ。

Fig2. LSE図書館の内部

次号、英国修士課程Taught Masterと日本の大学院の自家製「ダブル・マスター」ができるまで②(出願プロセス)につづく。。。

森江建斗 (モリエ ケント)
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) MSc International Relations Theory
京都大学 人間環境学研究科修士課程