概要
米国大学院学生会が毎年夏休み(6月~9月)・冬休み(年末年始)の時期に全国の大学で開催している海外大学院留学説明会は、海外の大学院に実際に留学した経験のある、あるいはすでに合格をもらって間もなく留学する予定の立っている学生を講演者・パネリストとして招聘し、大学院留学を検討している日本の大学生・大学院生に留学経験者たちの生の声を届け、情報提供することを目的とした説明会です。
最初の説明会は2007年の冬に開催され、2016年の冬の時点までに、全国の21の大学を会場として、89回の海外大学院留学説明会が開催されてきました。(過去の説明会の講演者やプログラムはこちらのページから、テーマとポスターはこちらのページからご覧になれます。また、最新の説明会の開催情報はトップページにも掲載されています。)
このページでは、大学院留学説明会への来場を検討中の学生の皆さま、米国大学院学生会からの講演依頼を受けるかどうか検討中の大学院留学生の皆さま、自校での説明会開催を検討中の各大学の担当者の皆さまに、米国大学院学生会の海外大学院留学説明会がどのようなイベントなのかを、2016年冬の東京大学での開催例を使ってご説明いたします。
登壇者
開催大学および開催時期は全体のバランスと予算に配慮しつつ、主に執行部の話し合いで決定されます。一方で、その後の具体的な海外大学院留学説明会のプログラムの作成および登壇者との交渉は、すべて会場責任者に一任されています。
2016年冬の海外大学院留学説明会の登壇者は、以下の5名でした。(登壇者の詳細なプロフィールはこちら)
- 青木俊介(カーネギーメロン大学 Ph.D.課程: 計算機工学)
- 鵜飼貴也(パデュー大学 M.S.課程: 航空宇宙工学)
- 児玉真希(ライス大学 Ph.D.課程: 歴史学)
- 市川早紀(マサチューセッツ工科大学 Ph.D.課程: 化学)
- 野田俊也(スタンフォード大学 Ph.D.課程: 経済学) ※会場責任者
傾向として、
- 開催大学の卒業生を中心に招聘する。
- 分野、文系・理系、年齢、現在の立場、アカデミア・非アカデミアなど、出席者の関心を上手くカバーできるよう、登壇者をバランスよく招聘する。
ということに配慮しつつ、登壇者を決めますが、登壇候補者の都合もあるため、すべての点が厳密に守られているわけではありません。
開催レポート
2016年冬の東京大学での説明会には、約130名の方にご来場いただきました。2016年夏にも同会場で説明会を開催していたこと、2016年冬の開催日が祝日(天皇誕生日)であったことから、やや参加者は少なめです。(2014年~2016年での東京大学での説明会には160~180名程度の方にご参加いただけるのが通常です。参加者の数は東京大学が最大ですが、慶應義塾大学など、安定して100名以上の方にご参加いただいている会場は他にも複数あります。また、より少人数の方と密にコミュニケーションを取るタイプの説明会を行う会場もあります。)
第1部・講演会
「海外PhD出願と研究生活 ~東大から中国,そしてアメリカへ~」
講演者: 青木俊介(カーネギーメロン大学 Ph.D.課程: 計算機工学)
「道を外れるための道: 専門分野の転向と海外大学院修士課程」
講演者: 鵜飼貴也(パデュー大学 M.S.課程: 航空宇宙工学)
最初に大学院留学についての基礎的な知識を提供したほうが、パネルディスカッションや自由質問のセッションが活発となるため、最初は講演会からスタートすることが多いです。
今回は、カーネギーメロン大学の青木俊介君が、アメリカ・イギリス両国への出願および海外の研究機関でのインターンを経験しているため、最初はその経験を中心にPh.D.留学生活のイメージをつかんでもらう講演を行ってもらいました。(青木君の講演資料はこちら)
続いて、アメリカへは修士課程で留学を行っており、更には留学時に大きな分野変更を行っているパデュー大学の鵜飼君に、MS留学とPh.D.留学の違いや、分野変更について解説してもらいました。(鵜飼君の講演資料はこちら)
第2部・パネルセッション
参加者が比較的少ない大学での説明会だと、自由質問に回答する形でパネルディスカッションを進めることも多いのですが、参加者の人数が多い東京大学のような会場だとすべての質問に答えるのが難しいため、事前質問を募って関心の重複しているトピックを選び、そのトピックについて討論を行う形のパネルディスカッションを行いました。
今回、パネルディスカッションの題材に選ばれたのは以下の3点です。
「留学の動機、長所と短所」
進行: 児玉真希(ライス大学 Ph.D.課程: 歴史学)
「出願準備について」
進行: 市川早紀(マサチューセッツ工科大学 Ph.D.課程: 化学)
「英語の学習法」
進行: 野田俊也(スタンフォード大学 Ph.D.課程: 経済学)
パネルセッションでは、個人の経験をベースにまとまった内容を話す講演会と比べると、多様なバックグラウンドを持つパネリストたちの異なる視点を上手く対比できる利点があります。留学説明会にいらっしゃる参加者の方の状況もまた色々なので、対話形式のパネルセッションは来場者全体の疑問解決に大いに役に立つと考えています。
第3部・懇親会・座談会
講堂での講演会・パネルディスカッションが終わった後には、小さめのラウンジへ移動して懇親会・座談会を開催しました。説明会本体と比べると、来場者らは小さいグループに分かれ、登壇者たちに直接に質問できるので、分野や出願先の近い留学経験者に、より自分の置かれている文脈を反映した個別的な質問ができます。
残念ながら、懇親会中は写真撮影を行っていないので、写真資料はないのですが、この会の場合、説明会本体への参加者の約半分(60名程度)が懇親会に参加してくださり、2時間ほどの間、登壇者たちに様々な質問をぶつけてくれました。
終わりに
このレポートでご紹介したのは、あくまでも2016年冬の東京大学での海外大学院留学説明会の事例であり、本文中でも述べたように、すべての会場で同様の形式で同様の説明会を行っているわけではありません。しかしながら、大会場での米国大学院学生会の説明会の様子がある程度推察できるかと思います。
(筆: 米国大学院学生会広報係、2016年冬海外大学院留学説明会会場責任者・パネリスト 野田 俊也)